作品紹介
act.22
作品
プロローグ
若干14歳にして家督を継ぎ、いくつもの
困難を圧倒的な実力で乗り越えてきた傑物
“織田信長”
彼の者が治める地“尾張”。
これより始まるは、
永禄、信長と尾張の物語。
一部
【喧騒】
冷徹な策略家という印象には反し、信長は民からも慕われていた。
尾張の城下町を支えるのは一家の大黒柱の男衆。口は悪いが情には厚い。商人は口達者に物を売り、武士は街を闊歩する。
信長が治めるこの町は、今日も賑わい、騒いでいる。男気溢れたその姿らの隣には、美しく強かな女たち。
【安寧】
男たちにも負けず劣らずの気概を持った、強く美しい女たち。普段は男勝りだが、時折みせる艶やかな表情に男たちは魅了される。
そんな彼女らの尊敬の的となっているのは、
信長の妻である濃姫。傍若無人な信長を、影ながら支え続け、尾張の繁栄に注力した。
富んではいないが賑やかな尾張。
そこには確かに人々の平穏があった。
二部
【不穏】
尾張に不気味な影が忍び寄る。
この気配はなんだ。雨も降り出した。
尾張に攻め入る大軍、その背に掲げるは「丸に二引き両紋」。
天下に最も近い。そう称される、駿河の大名今川義元。
今川の大軍勢が尾張を飲み込まんと進軍する。その口元には勝利を確信したような不気味な笑みが。
尾張の不穏を表すように空は更に荒れていく。
【開戦】
尾張は渡さぬ。織田軍出撃じゃ!
轟音が鳴る。同時に、両軍は相見える。
数百年もの間語り継がれる
“桶狭間の戦い”
いざ開戦。
数で勝る今川軍。
一歩も引かぬ織田軍。
尾張は渡さぬ。尾張は俺たちが守る。その一心で立ち向かう。ただ、数の差はあまりに大きい。
やはりこれは負け戦か。尾張の平穏は失われるのか。
誰もがそう思った。
だが、信長の目に光は消えていない。
【背水】
信長の意思に呼応するように雨も風も、天そのものが織田軍に味方しているようだ。
気がつけば織田軍が押し返し始めている。
次第に義元の顔から余裕が消えていく。
【渾身】
気がつけば残ったのは信長、義元の二人になっていた。
互いに力は残っていない。
これが最後の一撃になる。
なぜかそれが分かった。
振るわれる信長の太刀。
義元のもとへ歩きながら尾張の城、街、民が頭に浮かんだ。
守るべきものがこれほど人を強くするのか。
初めて尾張を背に戦ったその力に震えていた。
戦いは終わったのだ。
今川義元、討ち取ったり!
さあ帰ろう俺たちの国へ。我らが尾張へ。
【帰還】
「お帰りなさいませ。」
清洲城下にて信長の帰還を迎える濃姫。その余りに堂々とした姿を見て信長は問う。
「濃は俺が勝つと思っていたのか。」
「はい。殿が”必ず”帰ると仰いましたので。」
迷いの無い即答。
「ご覧下さい、殿。」
「「「信長様!織田軍万歳!」」」
英雄たちの帰還を町民は手舞足踏を以て賞賛する。
「皆、殿のお言葉をお待ちです。」
濃、おまえは本当に強い女だ。
「尾張の民よ!我らが国は守られた!
男、女、若人、老人、全員による勝利である!
勝利の凱歌をあげようではないか!」
サビ、フィナーレ
【一丸】
それは爆発だった。
喜び、安堵、全ての感情の爆発。
示し合わせたかのように全員が歌った。
それは尾張全土に伝播した。
震えていた。尾張が震えていた。
この歌、感情が尾張の叫びとなり、全国に届いたという。
【大賑わい】
この日以降尾張は隣国の危機に怯える必要がなくなった。
男はより騒がしく、女はより逞しく、尾張の街は自由な、活気ある街へと発展を遂げていく。
ここは尾張、名古屋。
信長の志を繋ぎ、継なぎ、成った街。
さあ今日も騒ごうか。
歌詞
暁想い馳せり 誇り掲ぐ 天の果て
遷ろう刻を背負い
瞳写す 遠き夢
浮き世風に揺れる
翅に心のせて
紅く 灯す火 照らして
鼓動鳴らせ 声となれ
晴れの勝利に宴となれ
響け尾張 天を衝け
永久となれ
朋に想い 紡ぐ刻 彩らせ
明日を願い 陽は昇る 遷る光へ 舞い踊れ
ここに生まれここに生きる
心ひとつに